千秋真一お誕生日SSその3


恋愛セオリー10のお題より

「10.幸せの法則」




のだめが振り向き、少し潤んだ瞳で見つめられた。
何か言いたげに、うっすらと開かれた口が小さく吐息を漏らす。
頬に手を添え、その唇に指を這わすとふたたび微かに吐息が漏れる。
お互い、それ以上出てこない、言葉にならない言葉を伝えるために、どちらからともなくゆっくり唇を重ねた。

誘い込まれるように口内に舌を侵入させると、その動きにのだめの舌もゆっくりと反応する。
激しく求めあうのとは違う、互いの存在を確認するような、ゆっくりとしたキス。

------満たされる

一度唇を離し、もう一度軽い音を立てて触れ合うと、のだめが照れたような笑顔を見せた。
そして、身体をこちらに向き直して体勢を整えると、まっすぐな瞳で見つめられた。

「先輩、生まれてきてくれて、ありがとうございます」
「……それ、オレがお前の誕生日に言った言葉」
「ハイ。でも、今日の準備してて、征子さんとかとお話してるうちに…心から、そう思ったんデス」
「……母さん、何か言ってた?」
「ありがとうって。でも、ありがとうって言いたいのはのだめのほうデシタ」
「何で?」
「だって、征子さんと先輩のお父さんがいなければ、先輩はいまこうして、のだめと一緒にいることができないわけデスから……
こうやって……キスしたり、一緒にお風呂入ったり……できるのも、先輩のお父さんとお母さんがいるからで。
だから、征子さんにもありがとうって言ったんデス」

誕生日は、ただ生まれて、ひとつ年をとることを祝う日ではなく、生んでくれた親に感謝する日である---
そんな話をどこかで読んだことを思い出した。
確かに……あんな親でも……あんな父親ですらいなければ自分はここに存在することができなかった。
その行動を……そしてその存在を今はまだ受け入れることができずにいる自分だが、
いつの日かそうやって感謝することができるようになるのだろうか。
笑顔で再会できる日が来るのだろうか。

「先輩?……しんいちくん?」

のだめの呼ぶ声でふと我に返る。

「のだめ、ちょっとのぼせそうなんデスけど……」
「まだ早いだろ」
「はぅぅ。でも……」

確かに、バスルームに充満する濃厚なバラの香りに自分も少し酔ってしまった気がする。
食事の時に飲んだワインもまだ身体に残っている。

「じゃ、ベッド行く?」
「……ハイ」

シャワーで軽く身体を流し、のだめを抱えてバスルームを出る。
互いのからだから香る、濃厚なバラの香りが脳のスイッチを入れ替えた。

のだめをベッドに横たえると、あらためてキスを落とす。
首に回された手を心地よく感じながら、先程とは違う、激しく求めるキスを繰り返す。
耳へ、頬へ、首筋へ、瞳へ。隙間なく、キスで埋め尽くすように。
アルコールとも風呂上がりとも違う火照りを身体に感じながらキスを繰り返す。

這わせたキスが胸元に達するころには、のだめの身体から力が抜けきっていた。
胸の隙間に残る、拭き残しとも汗ともつかない水滴を吸い取り、さらに強く吸って赤い小さな痕を残す。
そのままふたつのふくらみに両手を添わせ、両方の頂を交互に口に含む。

その行為に敏感に反応を示すのだめの身体を、すべて自分の手中に収めたいと思うのは男のエゴなのだろうか。
こいつを完全に、自分のものにすることはムリだとわかっているし、そんな女なら自分はこうして惚れていないと思う。
それでも……今だけは。今だけはこのすべてを自分のものにしたい。

「あ……背中にまだついてる」
「え?」
「ほら」
「はぅぅ」

唇で、背中に張り付いたハート型の残骸をはがす。

「こっちにも」
「ウソ……」
「ホントだって」

滑らかな背中のラインを唇でたどっていく。
背骨のくぼみや、ほどよく肉のついた肩甲骨にそって舌を這わせ、腰へとたどり着く。
丸みを帯びた腰のラインを手でなぞっていくと、生まれたままの姿を、今さらながら恥じるように身体をくねらすそのしぐさが、
また扇情的で理性がきかなくなる。

のだめの中心部に顔をうずめ、わざと卑猥な音を立てながら奥へと舌を進ませる。

「いやぁ……」
「逃げるな」
「でも……」
「でもじゃなくて」
「もう、ダメデス……」

涙声で請われて。
自分も耐えきれなくなり、壊れてしまいそうになった自身を潤ったのだめの中心に埋めた。


それから何度求めあったのだろうか。
のだめの肌を思う存分味わってまどろみ始めるころには、日付が変わろうとしていた。
ふと窓を見上げると、雲の隙間からうっすらと月明かりが漏れている。
規則正しく聞こえてくるのだめの寝息に自分の呼吸をあわせながら、朦朧として行く頭に今日のこと、今までのことが浮かぶ。

頭に響くのだめのピアノの音。
母のこと、そして父のこと。
母はどのような思いであの小箱を贈ってきたのだろう。
父は何を考えてあの箱を小さなころのオレに買ってきたのだろう。

-------生まれてきたことに、生んでくれたことに感謝、か。

そう遠くない未来、きっと自分も親となる日がくるだろう。
その時隣にいるのが、コイツであるように。

胸元で安らかな寝息を立てるのだめの髪に顔をうずめ、そのまま自分も眠りの世界に落ちていった。




-------翌朝。

「ムキャー! 先輩! 大変デス!」
「なんだよ」
「お風呂つまらせちゃいました……」
「だからオレが掃除するからそのままにしとけっていっただろ!」
「だってシャワー浴びたくて……」
「巣に帰れ!!!」





〜fin〜

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