「センパイは、サンタクロースって何才まで信じてました?」
「え?あ、うーん…7、8才じゃないか?よく憶えてないけど」
「のだめはですね、ずっと信じてマスよ?」
「は?どういう意味?」

ウチには煙突がないからサンタは来ないよ、大きくなって煙突のあるお家を自分で建てて呼びなさい、ってヨーコに言われたんです。
それでも、25日の朝起きるとプレゼントを渡されるんですよ。
“サンタさんからだよ”って。
だから「サンタさんはどうやってウチに来たの?」なんてヨーコを質問攻めにしたら、ヨーコ、なんて答えたと思います?
煙突のあるお家が代表してもらってくれて、それを朝一でもらってきたって。
意味わかんないですよね?
でもそれをよっくんとのだめはずっと信じてて、煙突のあるお家っていったら銭湯だよね、じゃあイブに銭湯に泊まればサンタさんに会えるかな、なんて言ってイブに銭湯に連れてってっておねだりしたり。

「だからセンパイ、煙突のある家建ててクダサイ!」
「なんで…」
「サンタさんを、うちにご招待するんデス!先輩の財力なら煙突のある家のひとつやふたつ…」
「オレの金じゃないし…」

手を握りしめ力説するのだめを見て少し羨ましいと思った。
ノエルで思い出すのは帰ってこない父親の後ろ姿。
サンタクロースに、プレゼントよりも父親をお願いする手紙を書いたこともあった。
その手紙を見て、母は何を思っただろう。

あれから時は流れて、気付けば自分は大人になり、サンタクロースのことなど夢にも思わなくなった。
でも、あのときと同じ部屋で、飾りの足りないツリーと、そばには多少変人で変態ではあるが、愛しい人。
相変わらず後ろ姿しか父の姿は思い出せないけど今目の前にいる女に、そんな思いはさせたくない、させないと思う。

「今年はもう、来てるみたいだぞ。オレが預かっておいた」
「ほえ?」

指をさしたその先には、飾りの足りないツリー。
そして、目を凝らさないとわからないような、小さな赤い光。

「…サンタさん、今年はずいぶんキザデスねえ…」
「そういうこと言ってると、あれはオレがもらうぞ」
「ダ、ダメデス!あれはのだめのデス!」

慌ててツリーから細い鎖をはずし、光にかざす。

「んふふ…先輩!つけてクダサイ!」
「うん。こっち来て」

繊細な金具を首元で留め、そっと項に、ふれるだけのキスを。

「Joyeux Noel」


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L72補完。


皆様よいクリスマスを!

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