「王子様気取りで」





「先輩…」
「何?」
「先輩、コレ…」
「えっ?」

日本から送られてきた、クラシックライフ最新号のカラーグラビア。

『千秋真一日本凱旋公演!』

と、大きな見出し。


「ああ、この記事ね」
「なんでそんな普通にしてられるんですか」
「もうあきらめてるから」
「さすがデスね…」
「どういう意味だよ」
「このくらい取り上げられて当然、とか思ってるんじゃないデスか?」
「それはない」
「じゃ、なんでそんな冷静にいられるんデスか!?」
「慣れとあきらめ」
「この写真、こんなアップですよ!」
「そうだな」
「これでまた、ファンが増えちゃいます…」
「ああ…まぁ…」


確かに。
日本に帰ったとき、まず成田で弱ってるところを
“ファン”と称する女性数名につかまった。
…ような気がする。
のだめと、迎えに来ていた母さんが対応してたからよくおぼえていないが。

「あのとき、のだめ、“あの女、何者!?”って、
すっごい怖い目で睨まれたんデスよ…」
「別に、彼女なんだから堂々としてればいいじゃん」
「そういうわけにもいかないんデス!」

そういえばコンサートを終えて帰ろうとしたら
楽屋出口に花束やら贈り物やらを抱えていた女性が
何人もいたような気がする。
…猛烈な勢いで真澄が追い払っていたからよく見えなかったが。

「真澄も、ああいうときはやっぱり役に立つな」
「何デスかー!!その言い方は!」
「めんどくさいし」
「女性の気持ちを、まったくわかってませんね」
「わかりようがないし」
「ひどい男デス」

エリーゼと、クラシックライフが、オレをどういう売り方をしているか
なんてよくわかっているけど。
売り方より、オレは評価のほうが大事だし。
それに。


「女は、お前以外必要ないし」


膨れっ面で、唇を尖らせて
いつまでもそのグラビアを眺めている
たったひとりの、自分に必要な女を、抱き寄せた。

「やっぱ先輩はズルいデス」
「は?」
「そうやって、こういうときだけ巧いこと言って」
「何だそれ」
「女性の夢を簡単に打ち砕いて」
「お前も、打ち砕かれた?」
「打ち砕かれた人の気持ちになってマス」
「でも、お前は打ち砕かれて、ないんだろ?」
「先輩は、みんなの王子様なんですよ?」
「でも今は、お前だけのものだぞ?」
「そ、そんなセリフには、負けませんからね!」
「素直に負けを認めろって…」

涙目で、まだ尖らせたままの唇にそっとキスをして。

「な?」
「…先輩には、とっくに降参してマス」



お題提供 真昼の夢 様



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たまには千秋優位で。
王子なので。



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